Webディレクターのお作法

事業会社のWebディレクターって何をする仕事?

"Web周りで指揮棒を振る制作監督"

私は現在、Webディレクターとして事業会社に在籍しています。

職業:Webディレクターとして明確に採用されたわけではなく、
[企画・マーケティング・デザイン制作全般に理解があり任せられる人]
[さまざまな立場の人と協力して仕事を進めることができる人]
このようにざっくりとしたポジションと人間性で募集されている求人に応募したのがきっかけです。

いざ入社してみると、さまざまな仕事が舞い込んできました。

  • 女性客向けのLP(ランディングページ)を1から企画して制作して欲しい
  • 公式サイトが古いからリニューアルして欲しい
  • 料金パンフレットとネット上の価格が違っているから統一して欲しい
  • イベント用の特設サイトを期間限定でオープンして欲しい

などなど。(実際はパンフレットやPOPなど紙のお仕事もたくさんあります)

私が入るまで会社組織には、社長役員・営業担当・制作担当・経理総務担当・人事担当などと、それぞれやるべき役割がこれと決まっている人達しかいなく、各部署の橋渡しとなるポジションがいない状態でした。
さらに、チームリーダーであるマネージャークラスも置かれてしていなかったのです。


そういう会社で何が起こりやすいかというと、

パターン1
社長 「我が社は今後こういうイメージのWeb戦略で商品をPRしていきたい。進めてくれ」
営業 「分かりました。そういうわけで社長が言っているからよろしく(ざっくり)」
制作 「原稿は?イメージは?コピーは?値段は?納期は?誰が確認者になるんですか?」
営業 「俺たちは自分の仕事があるから...デザインのことはよく分からないし....」
社長 「進むのが遅い!俺の言ったイメージと全然違う!文章も間違いだらけ、何しているんだ!」
営業 「デザイン担当がなかなか作ってくれないから....」
制作 「営業担当がちゃんと指示も確認もしてくれないから....」

パターン2
営業 「名刺のデザインが古くて商談の時かっこつかないからすぐ変えて欲しい。」
総務 「ホームページの情報が間違っているからあれもこれも修正して欲しい。」
役員 「新しい商品と企業パンフレットを急ぎで作って欲しい。」
制作 「どれを先に進めればいいですか?」
全員 「「「できれば自分のを先に....」」」
社長 「今度大事な発表会があるから急いでスライドを準備してくれ!」
制作 「社長、皆さん、優先順位を教えてください...。」


誰も悪くないのですが、このようにうまく仕事が回らないことが起こりがちです。
社内でこんな有り様なら、社外の人も関わってくるプロジェクトとなるともう大混乱。
そこでディレクターの出番というわけです。

私は、グラフィックデザイン制作、広告運用管理などの実務経験はありましたが、
初めからプロ並みのWebデザイン制作やコーディングスキルは持ち合わせていませんでした。
HTML&CSSを教本で学び、Word Pressで個人サイトを作って遊ぶような、基礎知識だけでした。
それでも外部の制作会社さんやフリーのデザイナーさんと掛け合って複数の案件を同時進行しながら
Webをメインに制作物を日々更新し続けています。

「ディレクターさんに頼むと話が早い」
このようにありがたい言葉をいただき、重宝されています。
以前の職業は作った分だけ報酬を得るフリーランスデザイナーでしたが、ディレクターとして制作チームのマネージャー職に就いたことで年収は3倍近く上がりました。

四方八方から舞い込む依頼を交通整理してデザイナーに渡し、責任を持って最後まで見届ける
それがディレクターの仕事です。

Webディレクターのお作法3つ

ディレクター業というのは、スケジュールと工数を管理し、クライアントとスタッフの間に入り、いくつもの案件を滞りなく同時進行する役割を求められます。
未経験からWebディレクターを始めた私は、社長やクライアント、インハウスデザイナー、社外デザイナーなど、さまざまな立場から考えとスキルを持った人たちと密に情報共有を行い、仕事を通じて良好な関係性を築けています。
技術者の方々とスムーズな会話をするために、またクライアントからの相談に正確かつ迅速に回答するために、知識や技術の習得ももちろん必須です。
ですが、高度なプログラミングスキルがなくても、これから挙げるWebディレクターとしての心がけを実行すれば、社内外の人と楽しく生産的な仕事を続けていけると実感しています。

私自身が実践している、Webディレクターのお作法をご紹介します。

(※ web制作現場には様々な職種の人が関わってきますが、この記事ではデザイナーと表記をまとめます)

1デザイナーに敬意を払う

いついかなる時も実際に手を動かす人=デザイナー(エンジニア)に最大級の敬意を払う。
ディレクターとして最も大切な心構えだと思います。
社内のインハウスデザイナーでも、こちらがお金を払う側の社外デザイナーでも、関係ありません。
たとえ立場上で自分が優位に立っているとしても、常にデザイナーの体調やモチベーションに気を配り、クリエイティブに集中してもらえるようにディレクターは努力をするべきです。


例えば、毎日の連絡でも、常に初めての間柄のような気配りを忘れないようにしています。
Web制作を進めるにあたり、メールでのやり取りがとても多いです。電話はログが残らないのでよほど緊急でない限り、ほぼテキストベースで仕事を進めます。
私は毎日平均20通〜30通は長文でメールを書きます。

「いつもお世話になっております。○○です。」
「9月に入ってから急に気温が下がりましたが、ご体調はいかがでしょうか。」
「表題の件で、今回もデザイナー様のご協力を賜りたく、ご連絡をさせていただきました。」
「背景はこう、要点はこう、備考はこうです。詳しく依頼書にもまとめましたので添付させていただきます。」
「前回デザイナー様にご制作いただいたページは大変評判が良く、成果もこのように上がっております。」
「ぜひ今回もお力添えを頂けますと幸甚に存じます。ご査収のほどよろしくお願い申し上げます。」


2年間ほぼ毎日メールしている外注デザイナーなのですが、いつもこれくらい丁重にお仕事の話をしています。

実際に制作が進み、確認作業に入り、デザイナー側の誤字やミスがあったとしても、
「私のお伝えの仕方が悪くて申し訳ございません。二度手間となってしまい恐縮ですが、このようにお直しをしていただけますでしょうか。」
と、常に自分から先に謝って、修正を頼むようにしています。
もしこれが、
「ここが間違っていました。前に送った資料を読み返してください。あれも直っていないので早急に修正をお願いします。」
このように高圧的で配慮のない伝え方だと、どうでしょうか。
もちろん相手もプロなので手を動かしてはくれるけど、良い気持ちはしないですよね。それが毎日ずっと続くとなると、フラストレーションが溜まり、「この人からの仕事は嫌だなぁ」と、心の距離が生まれてしまいます。
渋々関わる相手には、もっといいクリエイティブを作ろう!という気もわかなくなります。
メールひとつをとっても、常にデザイナーへの敬意を忘れてはいけないのです。

2.依頼した作業は全て記録、期日内に入金する

デザイナーは、作業費の入金に対して立場が弱い宿命にあります。
会社が社外デザイナーに制作依頼した場合、大抵は月締めの翌月末支払い、つまり後払いです。
デザイナー側からするとその月に頑張って手を動かした分の報酬を得るのは一ヶ月以上も後になるのです。
(先払いもリスクはあるので良し悪しなのですが)
私も元々フリーランスデザイナーとして生計を立てていたので、「ちゃんと振り込まれるかな...」と常に不安が付き纏っていました。
クライアントとデザイナーの関係上、万が一振り込みがなくても申し出がしにくいものですからね。

そこで、ディレクターとして押さえるべきポイントは2つ。
いつどんな仕事を頼んだのか?作業ログを残す。
ちゃんと期日内に全額入金できているか?入金確認をする。

デザイナー側の身になって、入金確認のお返事を聞くまでが自分の仕事として、最後まで追いかけるべきなのです。

私が入社する以前から、一人の社外デザイナーが付きっきりで協力をしてくれていました。
誠実な人柄で、美しく安定したWebサイトを作る非常に優れたデザイナーさんなのですが、業務を通して信頼関係を築き始めた頃、とても言いにくそうに、これまでの請求トラブルについてご相談を受けました。
よく話を聞くと、過去10年間の取引の中で何度も請求処理漏れがあったらしく、付き合いも長いので言い出しにくかったということでした。
(それでも制作依頼を黙って引き受けてくれていたのですから頭が下がります...。)

青ざめた私はすぐに請求書の入金漏れを洗い出し、担当役員と経理部に早急に入金依頼しました。
この社外デザイナーがどれほど我が社にとってどれほど重要な存在か、その説明も付け加えて、二度と請求漏れが起きないように取り組みたい旨も伝えました。
入社したばかりだったので、生意気だと思われるのは承知の上でした。
ですが、私はディレクターなので、デザイナーに正当な対価を支払うまで手を緩めないのは当然の責任です。

相談を受けてから一週間以内に未払い分を全額きっちりお支払いし、信頼を取り戻すことができました。
今でも自分から、今月分の請求書のご用意をお願いいたしますと、お声をかけるようにしています。
そして作業ログとすり合わせをして、1つも漏れなくお支払いできているか相互確認をします。
お互い気持ちよく来月の仕事も進めていけるように、こちらが受け取るデザインの出来栄えと同じくらい、こちらが支払う対価にも配慮する必要があるのです。

内製化が上手くいっている組織では気にしないで良いことですが、仕事が増えて来ると、外注でデザインを依頼する場面も発生するかと思います。
信頼関係を失う最たるきっかけはなんといってもお金のトラブルなので、絶対に注意したいところです。


3.公開後の成果をフィードバックする

デザイナーは自分の作ったものがあれで良かったのか、ちゃんと使ってもらえているのか、当然気になります。
これも私がデザイナー時代にもやもやとしていた部分です。
急いで良いものを作ってくれ!とクライアントに頼まれ、徹夜続きで納品したデザインが、あれで良かったのかな?ちゃんと役立ってるかな?と我が子の行く末を案じていました。
だけど、デザインを頼む側は、作ったその後はどうなったのか、忙しさにかまけて情報共有を疎かになりがちです。
納品からだいぶ時間が経って自分から聞いてみると、
「ああ、あのデザイン?もう使ってないよ。」
と言われたり、
「すぐに効果出てたよ。まだ現役で出てるよ。」
と言われたり。大変な思いをして作った割には蚊帳の外になることが多く、寂しい気持ちになります。

なので、普段の連絡のやり取りの中でも良いので、
「この前作ってもらったLPが早速集客できています!」
「競合他社よりも分かりやすいとお客様が褒めていました!」

などと、できるだけプラスの面のフィードバックを添えるようにしています。
CTRが、CVRが、ヒートマップが、とマーケティング分析の結果を伝えるのもデザイナーさんによっては良いと思います。
作ってはい終わりにせず成果まで伝えることで、うちとの仕事を面白いと思ってもらえる信頼関係の一歩になるでしょう。

終わりに

ディレクターの心がけとしてはもっと細かくたくさんありますが、

自分がデザイナーだったら、どうしてもらえると嬉しいか?
この人からの依頼なら、とポジティブな気持ちになって仕事がはかどるか?

詰まるところお願いされる側の立場を慮る姿勢に行き着きます。
もっと同じ目線で深く仕事の話がしたいと思い、プログラミング、エンジニアの勉強も始めることにしました。

私は仕事で関わる全てのデザイナーさんが大好きです。
デザイナーさんの一番の理解者になりたいと願い、これからもサポーターに徹したいと思っています。